表面的にはごく普通の当たり前の家 しかし私の場合、これが厄介であった
私の家はごく普通の家であった。表面的には。
しかしこれが真に厄介な事だったと今になって思うのである。
父親がアルコール中毒で暴力を振るう、ギャンブルで借金まみれになっている、愛人がいる…、もちろんこういう家庭は地獄そのものである。しかし子供はその環境が地獄である事に早い段階で気付く事が出来るであろう。
翻って私の家では、父は体質的に全く酒を飲めない事もあって、酔っ払っている事は皆無であり、ギャンブルや浮気の類も全くと言っていいほど無かった。ギャンブルに関しては、あるにはあった。ただそれは、たまの気晴らしでパチンコに少しのお金と時間を使う程度に過ぎないものであった。
遊びっ気が無い父は厳格な性格で、私や2人の弟にも厳格さを求め続けた。
なので、私が育った家が「機能不全家族」だと知ったのは、大人になって心理学関連の本を読み漁るようになってからの事であった。
先に書いた通り、自分が置かれた環境を地獄であると認識できた子供はまだ救われる。そこで親に反旗を翻すも良し、そっと家を出るも良し、である。
しかし環境が地獄であると認識出来ない場合、「至らない自分」を責める事になる。
親に叱責されるだけではない、自分で自分を否定する事が始まるのである。
何度も言うようだがアル中による暴力・借金・愛人などは子供の心を歪ませるし、悲惨な環境である。彼ら・彼女らの境遇を考えると胸が痛くなる。
しかし、私の家のように表面的には問題が無い家庭が健全かと言うと、決してそんな事は無い。
一見健全に見える家庭では外からの助けが無いことはもちろん、子供自身も身動きが取れない。こうして子供の心は静かに、人知れず、当の本人にさえ分からないうちに壊れていくのである。